
たかが名刺交換、されど名刺交換
名刺交換は、ビジネスパーソンの最初の関門と言えるのではないでしょうか。
筆者自身、入社後間もない頃、営業でお客様のところへ行った際、とても緊張して震えてしまったことがありました。そんなとき、スマートに名刺を交換する先輩を見て、恰好いいなと思ったことを強く覚えています。
時が過ぎ、逆に提案を受ける側になったとき、パートナー企業に中途で入社された方が挨拶に来てくださり、
名刺交換をする際、少しおどおどされており、不安になってしまったこともありました。
一言でいうと、名刺交換は、文字通り単に名刺を交換するというだけの行為かもしれません。
しかし、たかが名刺交換、されど名刺交換で、その一挙手一投足が大事な商談の成否に関わることにもなります。
かなり昔の事例になりますが、2000年頃、作家であった田中康夫氏が長野県知事に当選され、
初登庁をされたときの話です。その時、e-mailアドレスも書いてあるということで、田中元知事が県庁内であいさつ回りをし、名刺を配っていた時に事件は起きます。
田中元知事が当時の局長に名刺を渡した際、局長はあろうことか、渡された名刺を折り曲げてしまいました。
局長なりの言い分はあったようですが、このことがワイドショーで連日取り上げられるまでになり、数日間で1万件の苦情が県庁に届いたそうです。
結果的に、この局長はマスコミに追われ、県庁にいられなくなり、辞職せざるを得なくなりました。
この事例はかなり極端な例かもしれませんが、名刺交換を馬鹿にしてはいけないということを思い出させてくれます。
そもそも、日本と海外では、名刺に対する重みが違い、名刺は、日本では「相手の顔」と同格に捉えることが一般的です。ですので、さきほどの局長は、田中元知事の顔に泥を塗ったという形に捉えられてしまいました。
逆に海外、特に欧米では、名刺交換はあくまでも連絡先を伝えるツールであり、名刺交換よりも、握手することを大事にする文化があります。この流れが顕著に表れるのが、やはり、名刺を交換する瞬間です。
ここからは、日本の名刺交換のルールを中心に紹介したいと思います。
名刺交換のルール
渡す頻度
日本では、初めて会うビジネスパーソン同士は、必ず名刺を交換しますが、
欧米では、今後連絡を取らないと判断したら、名刺を交換しないこともしばしばあります。
相手の時間を必要以上取らせないということが、マナーとして捉えられています。
渡し方
名刺は、商談の前に渡すのが通例になっています。
最初の挨拶の際、相手の目をみながら、自分の会社名、肩書、名前を伝え、名刺を渡しましょう。
名刺は、相手がちゃんと読める向きにして渡します。
基本的に、名刺をテーブル越しに渡すのも厳禁ですので、きちんと相手の前に移動してから名刺交換しましょう。
そこまできっちりとしたルールは欧米ではなく、テーブル越しに名刺を渡すこともあります。
もちろん海外といっても国によって習慣が違いますので、海外での名刺交換、海外の人との名刺交換の際は、前もって調べるといいでしょう。
事前にルールや習慣、文化を調べて知ることは、日本でも海外でも同じです。
ビジネス―パーソンにとって、相手を知ることは非常に重要となります。
渡す順番
渡す際は、基本的に訪問先の相手の方に、訪問をした側からお渡しします。
また、目下の人から目上の人へ渡すのがルールになります。
上司と一緒に訪問した際は、上司から名刺交換をします。
受け取り
相手から名刺を受け取る際は、必ず名刺入れの上で受け取ります。
名刺入れを、お皿のようにして受け取るイメージです。
名刺入れを使わずに、素手で受け取るのはNGです。
受け取った後、「~~さんですね」と相手の名前を復唱すると、言い間違いを防ぐ効果が有りオススメです。
置き方
名刺を受け取った後打ち合わせをする際は、名刺入れにしまってしまうのではなく、相手の座席の順にあわせて名刺入れか、机に置きましょう。
1対1の場面であれば、名刺入れの上に置くようにしましょう。
相手が複数の場合は、必ずしも名刺入れの上に置かなくても構いません。
ここでも、名刺はその人の顔と思い、丁寧に扱うよう心がけてください。
商談後
商談が終わった後は、必ず名刺入れにしまいましょう。
直接ポケットやカバンに入れるのは、大変失礼に当たるので、気を付けましょう。
欧米では、日本と違ってこの点が結構緩く、ポケットに入れるということもよくあるそうです。
その他気を付ける事
・名刺をきらさない
名刺をきらすことは多々あります。
十分な名刺が入っているか、訪問する前には確認することを癖づけましょう。
・差し出すタイミング
相手が胸ポケットから出すのが遅くなったりして、渡す準備が整わないことがあります。
その場合は、先にこちら側から差し出してしまうと、相手を焦らせることにつながります。
・礼儀を忘れない
色々と名刺のルールをお伝えしてきましたが、一番大事なことは、相手を思いやるということです。
思いやる気持ちがあれば、多少の所作を間違えたとしても、失礼とは思われません。
常に相手の立場に立って、思いやりのあるビジネスパーソンでありましょう。
進化していく名刺交換
最近では、リモートワークが進み、デジタル名刺などの活用も進んできています。
時代・文化によって、名刺の在り方や、交換時のルールは変わってきます。
ただ、どの時代にも、相手の立場に立って思いやれれば、最適なルールが見えてきます。
明日から、洗練された名刺交換をして、楽しくビジネスに取り組んで行きましょう。
この記事を書いた人
栗林 陽
「少しでも良い社会のために」
大学までサッカー小僧として時間を過ごす。新卒時は大手IT企業へ就職。その後シドニーへ語学留学。半年過ごしたシドニーで自分を助けてくれた恩人のおかげもあり、多くの人に寄り添える仕事に従事しようと、研修業界へ就職することを決断し、現会社へ。
DI室 チーフディレクター